読書の醍醐味
毛越寺の常行堂を望む庭園は、読書するのに最高の場所です。梅雨の晴れ間の新鮮な空気の中で、星野道夫の「旅をする木」を読んできました。もう何度読み返した事でしょう。彼の心が純粋だからなのでしょうか。何度読んでも心が洗われるようなすがすがしい気持ちにさせられます。この本の中の”海流”という章にでてくる古本屋「オブザーバトリー」。アラスカの隔絶された坂の多い小さな港町ジュノー、この街のフランクリン坂にある古本屋が「オブザーバトリー」。行ったこともない街のちいさな古本屋の情景を、なぜか不思議にありありと心の中に描くことができる、そんな素敵な文章です。そして古本屋の女主人ディイとの会話の中に私たち読者は、知らぬ間に見事に引き込まれてしまいます。星野道夫がシベリア・カムチャッカの地で突然の死を迎えてから26年。それでもいまだにたくさんの人々に、世界中で読み継がれているこの「旅をする木」。できることなら多感な中高生の皆さんに、是非とも読んでもらいたい本当に素敵な心にしみるエッセイです。